インプラント治療における「仮歯」とは
インプラント治療を検討されている方の多くが、治療期間中の見た目や日常生活について不安を感じています。
特に前歯の治療では、「歯がない期間があるのでは?」「人前に出るのが恥ずかしい」といった心配をされる方も少なくありません。
実は、インプラント治療では「仮歯」を装着することで、治療期間中も見た目や機能を保つことができます。仮歯は、インプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込んだ後、最終的な被せ物が完成するまでの間に使用する一時的な歯のことです。
仮歯は単なる見た目の問題だけでなく、治療を成功させるために重要な役割を担っています。インプラント体が骨や周辺組織としっかり結合するまでの数カ月間、患部を保護し、噛み合わせを維持し、歯並びの変化を防ぐ働きをします。
当院では、患者様が安心して治療期間を過ごせるよう、一人ひとりの状態に合わせた仮歯の提案を行っています。
仮歯の重要な役割
仮歯は治療中の「つなぎ」というだけではありません。
実は、インプラント治療の成功を左右する重要な要素なのです。
見た目の違和感をなくし審美性を保つ
特に前歯の治療では、仮歯によって見た目を自然に保つことができます。歯が抜けた状態では、発音にも影響が出てしまいますが、仮歯を装着することで、日常会話も問題なく行えます。
仕事や人との交流が多い方にとって、治療期間中も普段通りの生活を送れることは大きな安心材料となるでしょう。

歯並びの歪みを抑える
歯が抜けた状態で放置すると、周囲の歯が動いてしまいます。
隣の歯が傾いたり、噛み合う反対側の歯が伸びてきたりすることで、せっかく作った最終的な被せ物が合わなくなってしまう可能性があります。仮歯を入れることで、このような歯の移動を防ぎ、治療計画通りに進めることができます。
細菌などから患部を保護する
お口の中には約1000億~6000億の常在菌が生息しており、虫歯や歯周病の原因となる細菌も含まれています。インプラント体が安定する前に細菌感染を起こしてしまうと、炎症を起こしてインプラント体の結合を阻害する因子になってしまうこともあります。
仮歯は蓋のような役割をして、細菌がインプラント体や患部に入り込むのを防いでくれます。また、食事の際の咬合圧や、飲食物による温冷などのさまざまな刺激が、直接インプラント体にかかることを防ぎ、患部を保護してくれるのです。
歯茎や顎の骨を安定させる
長期間入れ歯を使用していた方や、抜けたまま放置していた方は、顎骨や歯茎が圧迫されて変形している場合があります。
変形してしまっていると、インプラント治療をしても見栄えが改善されないことがあります。そのような状態の時に、仮歯を入れることで、少しずつ形状を変えながら、お口の中の状態を安定させる治療を行うこともあります。
仮歯を入れる期間の目安
仮歯を装着している期間は、患者様のお口の状態や治療法によって異なります。
一般的には、インプラント体を埋入してから3~6ヶ月は最終的な人工歯を装着することができません。上顎がおよそ6ヶ月、下顎がおよそ3ヶ月といわれています。この間は仮歯を装着し、インプラント体が骨や周囲の組織と適切に結合するのを待ちます。
仮歯で様子を見る期間は、インプラント体を埋入した際の骨量や骨密度、インプラント体の本数、埋入時の初期固定の時点での強さ等が大きく関わっています。骨の状態が良好で、埋入したインプラント体が骨にしっかり固定できていれば、埋入手術当日に仮歯を装着することができる施術法もあります。
詳しい目安の期間については、当院で診察の際に患者様一人ひとりの状態を確認した上でお伝えしています。

仮歯を入れるタイミング
仮歯を入れるタイミングは、インプラント手術当日または抜糸後が一般的です。
手術当日に仮歯を装着する場合
手術直後に仮歯を装着するには、いくつかの条件を満たす必要があります。骨の状態が良好であること、骨の再生や造成が不要であること、噛み合わせに問題がないことなどです。
前歯の場合は見た目に影響が出やすいため、早めに仮歯を装着するのが一般的です。奥歯の場合は口腔内の状態を考慮して、仮歯を装着しないこともあります。
抜糸後に仮歯を装着する場合
抜糸は、手術後1週間~10日ほどで行う場合が多いです。
インプラントを埋め込んだあと、傷口を塞ぐために歯茎を縫合します。傷口が安定したことを確認したら抜糸を行い、仮歯を装着していきます。
手術当日に仮歯を装着できる条件は歯科医院によって異なりますので、手術直後に仮歯を装着したいと考えている場合は、事前に確認することをおすすめします。
仮歯期間中の食事の注意点
仮歯は最終的な被せ物と比べて強度が高いわけではありません。
人工歯の装着がしやすいよう、取り外しもしやすくなっています。そのため、食事の際にはいくつか注意が必要です。
硬い食べ物は避ける
仮歯は治療中に修正もしやすいように、レジンという材料でできています。強度は最終的に入れる上部構造ほどありませんので、気にせず硬いものを噛んでしまうと割れたり欠けてしまったりする可能性があるため注意が必要です。
以下のような食べ物は避けることをおすすめします。
- 硬い煎餅
- 硬いパン
- スルメイカ
- 氷

粘着性の高い食べ物に注意
仮歯は後に外すことを想定していることもあり、強度は弱めのセメントで合着しています。
キャラメルやソフトキャンディ、ガム、グミなどの粘着力の強いものを食べた拍子に取れてしまうこともあります。またその際に破損したり誤飲してしまったりする危険性もあるため注意が必要です。
手術直後の食事
インプラント手術後の2~3日程度は、ヨーグルトやスープなどなるべく噛まずに食べることのできるものを食べるのがおすすめです。患部に刺激を与えないようにすることで、治癒を促進することができます。
仮歯期間中の口腔ケアのポイント
仮歯を装着している期間も、適切な口腔ケアは欠かせません。
ただし、通常の歯磨きとは異なる注意点があります。
優しく丁寧に磨く
歯ブラシでゴシゴシ強く磨くと、仮歯が外れてしまったり、傷の原因になってしまいます。仮歯は長期間使うことを想定していません。あくまでも上部構造を装着するまでの「つなぎ」だということを意識しておきましょう。
柔らかめの歯ブラシを使用し、優しく丁寧に磨くことが大切です。
患部周辺は特に注意
インプラント体埋入後の患部周辺は、特に慎重にケアする必要があります。無理に歯ブラシを当てると、治癒を妨げる可能性があります。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた口腔ケアの方法を指導していますので、不安な点があればお気軽にご相談ください。

定期的な通院の重要性
インプラント体埋入後は、歯科医院で定期的におこなう状態の確認をおろそかにしたり、通院しないまま長期間経過すると、計画通りに治療が進まなかったり、上部構造が適合しなくなってしまったりといった不具合を起こす要因にもなりかねません。
定期的な通院で、インプラントの安定度や周辺組織などを確認することが、治療成功への近道です。
仮歯が取れてしまった場合の対処法
仮歯といえど、基本的によほどでないと取れることはありません。
ですが、場合によってはさまざまな悪条件が重なることや不慮の外力によって外れる可能性があります。
すぐに歯科医院に連絡する
仮歯が取れてしまった場合は、すぐに当院にご連絡ください。
自分で無理に戻そうとすると、インプラント体や患部を傷つけてしまう可能性があります。取れた仮歯は清潔に保管し、できるだけ早く来院していただくことが大切です。

患部を清潔に保つ
仮歯が取れた状態では、患部が露出しています。
食事の際は患部に食べ物が当たらないよう注意し、うがいをして清潔に保つようにしてください。ただし、強くうがいをすると患部を傷つける可能性があるため、優しく行うことが重要です。
他の治療法との比較
失った歯を補う方法として、インプラント以外にも入れ歯やブリッジがあります。
それぞれの特徴を理解した上で、最適な治療法を選択することが大切です。
入れ歯との違い
入れ歯は1本から数本なくなった部分を補う部分入れ歯と、一本もない状態を補う総入れ歯があります。人工の歯は歯肉の上に乗っているだけで、残っている自分の歯にバネをかけて安定させる取り外し式です。
長所として、歯を削らずに済み、健康保険の適用が可能なことです。短所として、入れ歯が合わないと痛い、硬いものを食べにくい、残っている自分の歯への負担が増大し早く失われてしまう、食事の後の手入れの煩わしさと慣れるまでの違和感があります。
咬む力はインプラントに比べると10分の1以下になります。
ブリッジとの違い
ブリッジは失ってしまった両隣の歯を削って土台にし、橋をかけるように金属の冠を固定する方法です。
長所として、固定式なので自分の歯と同じような感じで使え、咀嚼率が高く噛む力が分散でき、違和感も少なく見た目も良く、健康保険の適用が可能です。短所として、健康な両隣の歯を削らなければならず、土台になっている歯への負担が増え、健康な歯の寿命を縮めてしまいます。
また、土台となる健康な歯がなければブリッジにすることはできず、保険が適用される治療には制限があり、見た目を気にする場合は前歯3番目までしか白い材料が使用できません。
インプラントの優位性
インプラントは顎の骨の中に人工歯根を埋め込み、その上に歯を作る方法です。
治療には人工歯根の埋め込みの手術が必要で、健康保険は適用されません。しかし、義歯のかむ力をサポートし、義歯が外れにくくなり、インプラントは安定しており、かなりの力で物を咬むことができます。
人の物を噛む力は非常に強く、前歯で20kg、奥歯なら60kg、口の中全体では実に350kgぐらいのすごい力をもっています。噛む力は歯が約3分の1であごが残りの3分の2を支えており、あごの骨には歯の数だけ凹みがあり、その中に歯がきちんと収まっているため固いものを噛んでもびくともしません。
たった1本抜けただけでも、通常の2~3倍の力を加えないと同じようには噛み砕けません。失ってしまったら、すぐにでも同じように噛めるように治療をしなければ、噛む力だけでなく、体のバランスなどにも影響がでてきます。
きちんと噛めることの重要性
きちんと噛めるということは、痴呆症やがんの予防にも効果があり、全身の健康にも影響してきます。
昔に比べ医学は大変進歩しており、治療により失った歯と歯根を回復させ、自分のものと同じ感覚でしっかり噛むことができるようになりました。
さまざまな理由で歯を失った方、現在治療中で不自由な思いをしている方も、適切な治療によって、きちんと噛めて、見かけもきれいにして、いつまでも楽しい食事をすることが可能です。
まとめ
インプラント治療における仮歯期間は、一般的に3~6ヶ月程度です。
仮歯は単なる見た目の問題だけでなく、患部の保護、歯並びの維持、歯茎や顎の骨の安定など、治療を成功させるために重要な役割を担っています。仮歯期間中は、硬い食べ物や粘着性の高い食べ物を避け、優しく丁寧な口腔ケアを心がけることが大切です。
当院では、患者様に安全で最善な治療を提案しています。インプラント治療について不安や疑問がある方は、お気軽にご相談ください。一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立て、安心して治療期間を過ごせるようサポートいたします。
加藤歯科医院では、患者様が安心してインプラント治療を受けられるよう、丁寧なカウンセリングと最善の治療計画をご提案しています。治療中の見た目や日常生活についてのご不安も、お気軽にご相談ください。